音楽プロデューサー・エンジニア 玉置 淑晴氏 インタビュー TPS 7182 インプレッション

制約の多い環境でも、最大限に力を発揮してくれるケーブル

【玉置淑晴氏 プロフィール】
株式会社ナンクル代表。
東京の音楽専門学校卒業後、メジャーアーティストのバックバンドや楽曲制作に参加。現在は地元沖縄にて楽曲制作からミックスダウンまでを一貫して行うほか、DTM講師 、 マニピュレート、プロデュース、キーボード演奏、音響、イベント企画・制作を行う。また。アーティストの楽曲制作やTVラジオCMソングの他に、趣味である飛行機マニアが講じてJTA機内オーディオ番組の制作も手掛けるなど、沖縄を中心に幅広いフィールドにて活躍中。

 

解像度を重視した機材選定


── まず最初に、玉置さんが普段お使いの機材などを教えていただけますか

玉置淑晴氏:
はい。今まではaudio technica AT-4050をメインマイクとして使って来ましたが、最近はLEWITTのLCT540を導入し、メインマイクとして使用しております。音は見た目の通りAKGのC414の系統なのですが、C414の2~5kがドライブしがちな癖が抜けた素直なサウンドが扱いやすくて気に入ってます。ノイズレベルも限りなくゼロに等しいので、マイク以外を変化させた際の要素が非常に見えやすいですね。

── なるほど。HAは何をお使いでしょうか?

玉置淑晴氏:
HAはSSLのSix、NEVE系だとVINTEC AUDIOの273がメインですが、ケーブルをTPS7182にしてからはUNIVERSAL AUDIOのインターフェース、APOLLOのプリを直接使用することが増えました。APOLLO直の時はAPIのプラグインを通してレコーディングします。確かに実機との違いはありますが、マイクケーブルをTPS 7182に変更してから60~70Hz辺りの癖も無くなり、素直なサウンドでレコーディング出来るようになりました。7182を導入する前は「今日のボーカルに合うのは、どんな組み合わせだろう?」と、マイクの選定だけでなく、DAWのプラグインやプリアンプの選定で悩むことが多かったのですが、TPS 7182にした今はほとんど迷わないですね。

── マイクケーブルを変えただけで、作業効率がアップしたということですか?

玉置淑晴氏:
はい。TPS 7182の解像度が明確かつ高いので、機材のキャラクターを含めて些細な違いもしっかり把握できるようになり、ジャッジも早くなりました。作業効率が上がって本当に助かってます。

── ありがとうございます。DAWやモニター環境はいかがでしょうか?

玉置淑晴氏:
DAWはPRO TOOLS とLogicを依頼内容にあわせて、柔軟に使い分けています。
弊社はレコーディングのエンジニアリングだけでなく、クライアント様のご依頼に合わせて楽曲製作から承ることも多くございます。
そのような場合はLogicがメインになります。10.5になってからサウンドもアップグレードしたので、躊躇なく使用できるようになりました。
それとスピーカーですが、メインのモニターはムジークのRL906を使用しております。
ヘッドフォンはYAMAHAのHTH-MT8を2年前から使用しております。

── こうして伺ってると、スピーカーだけに留まらず、玉置さんの機材チョイスに解像度重視という一貫性を感じます。

玉置淑晴氏:
はい。ナンクルでは楽曲制作からミックスダウンまでを一貫して作業しております。弊社ではアーティストの楽曲制作だけでなく、CMや飛行機の機内番組、店舗や企業様のBGMを含む宣伝案件、それと地元沖縄の観光施設やテーマパークの施設内BGMなど、ご依頼頂く案件の内容は多岐に渡っております。
音楽制作からMA系までかなり幅広いご依頼に対応するとなると、自分の好きな音というよりも、解像度が高く、対応力や柔軟性のある機材を中心とした環境に、自然になっていきましたね。

 

── 沖縄の地元企業様の案件も数多く扱われているんですね。

玉置淑晴氏:
はい。あと、沖縄ならではということで言えば、三線を扱うことが非常に多いですね。

── 他のアコースティック楽器とは違う、三線ならではの苦労はございますか?

玉置淑晴氏:
三線のレコーディング環境は、ダイナミックレンジが大きく、ローが静かでないと厳しい。EQでハイを足すと津軽三味線のようになってしまいます。しかし高域が痛くならないように抑え気味にするとミッドが篭ったり、ボーカルと被りやすくなってしまいます。かと言って抜けすぎてもダメだし・・・・。慣れないと本当に難しい楽器だと思いますね。

── 三線のときのEQやエフェクト処理はどの様にされてますか?

玉置淑晴氏:
三線にコンプは基本的に使いません。三線の場合、コンプは音が籠もる原因になることが多いですね。録りの段階だけでなくミックスまで含めて、三線にコンプは出来るだけ使わないようにしております。コンプをかけた三線の音を後からEQで処理すると、全く別の楽器に聞こえてしまいます。
なので基本的にマイキングでイメージ通りの音と圧を録音できるように、かなり気を使っていますね。

 

── 想像以上に大変ですね。。。

玉置淑晴氏:
そうなんです。みなさんが想像されている以上に、三線はミッドレンジを中心とした帯域がダマになりやすいので、録りの段階でのマイキングはとってもシビアです。
私を含め、地元エンジニアの皆様はそれがわかっているので、沖縄のスタジオでは三線の音が綺麗にレコーディング出来る機材を揃えていく傾向があります(笑)。
シビアな三線を安心してレコーディング出来るということで、クライアントの皆様から信用されるという面もあると感じています。

 

── なるほど。玉置さんが生音感や解像度を重要視する理由がわかりました。

玉置淑晴氏:
MA納品も多いので、ラウドネスレベルにも配慮することが多いです。三線だけでなく、密度が高い音を歪ませず、ドライブさせずにどれだけ前に出すか、常に気を使ってます。

 

 

Inter beeでTPS 7182との衝撃的な出会い

── 弊社マイクケーブル TPS 7182は、どこでお知りになられましたか?

玉置淑晴氏:
2019年の秋に開催されたInter Beeで、知り合いのエンジニアから紹介されてブースに立ち寄ったのが最初でした。ケーブルによって特性があり音が違うことはもちろん理解していましたが、TPS7182をテストした時は決して大袈裟ではなく、「これほどまでに違うのか!」という想像以上の驚きと衝撃がありました。

── ありがとうございます。テストしていただいた時の環境を教えていただけますか?

玉置淑晴氏:
SM58、サンクラのミキサーというシンプルなセットをヘッドホンで、オーソドックスな他社ケーブルと比較しました。
パッと聞いて、まず300~500Hzあたりのローミッドの密度のある出方にびっくりしました。前に出る音の場合、機材などのキャラクターが強いことが多いのですが、このTPS 7182は本当にナチュラルで癖がなく、まるで生で聞いているようなナチュラルな音がヘッドホンから聞こえて来ました。

その時、卓のEQも弄ってみたのですが、ローミッド辺りの帯域をカットした時に、良い削れ方をしてくれましたね。音の大事なポイントは完全に保たれたまま、しっかりと下げたいところが下がる感じです。
SM58でこれだけわかるということは、もっと解像度の高い他のマイクの場合には、更にはっきりと効果があるんだろうなというイメージはすぐに掴めました。

── その後、すぐにご注文いただいたようですね。

玉置淑晴氏:
はい。もうとにかくすぐ導入しなきゃ!と思いましたので、まずはマイクでのレコーディング用に5mのXLRを購入しました。
私的には、華やかに展示されているミキサーやHAなどの高額商品や新製品ではなく、このTPS 7182が2019年Inter Beeでの一番の衝撃でしたね。何度も言いますが決して大袈裟ではなく、本当にそう感じました!

── ご自身のスタジオにケーブルが届いてからのご感想はいかがでしたか?

玉置淑晴氏:
まずはアコギのレコーディングで試しました。やはりちゃんとケーブルそのものの比較をしたかったので、自分のスタジオ環境で同じマイクを2本立てて、ケーブルだけそれぞれ変えて同時に録って比較しました。同じマイクで同時に録ってるので、同じように録れているはずなのに、もう全然違いました!

── ご自分のイメージとの誤差はありませんでしたか?

玉置淑晴氏:
マイキングしている時のイメージと録った音の誤差はありませんでした。音のピントが常に合っている感じで、イメージしてる音のキャラクター作りが把握しやすくなりましたね。
マイクとマイクプリの組み合わせを考えるのが非常にやりやすくなり、イメージ通りにレコーディング出来るようになったので、作業がスムーズになりました。
先ほどもお話ししましたが、このマイクとマイクプリの組み合わせを考える時にいつも悩んでいたので、本当に助かりました。
まさかケーブル変えるだけで解決するとは思ってもみなかったので、本当にびっくりしています!

 

 

 

── 録音の際、シンガーやナレーターの方からご感想を聞くこともありましたか?

玉置淑晴氏:
あります!
特に「なんだか今日、モニター聴きやすいです!」とおっしゃるナレーターの方は多いですね。
ケーブル以外の環境は以前と全く同じで、変えたのはケーブルだけなんですが(笑)
私だけではなく、いつも録りに来てくれてるナレーターの方にも「マイクの感度が上がって聞こえる」と感じてもらえてましたね。
実際に仕事で使用してみても、とても扱いやすいクセのない素直な音だと実感しました。

 

── いまお話を聞かせていただいたRECからまもなく、追加でご購入されたそうですが?

玉置淑晴氏:
ちょうどその頃にSSLのSixを導入したので、インターフェースまでの接続用などに使うために追加で注文しました。またモニタースピーカー(RL906)への送り用にもTRS- XLRのジャックを付けたTPS 7182を注文しました。

 

── ムジークのRL906だと、違いもはっきりしそうですね。

玉置淑晴氏:
そうですね。RL906自体、元々素直なのですが、ケーブルをTPS7182に交換してから、奥行き感が更に把握しやすくなりました。それと低域も締まり、暴れなくなりました。
特に200~400Hzのあたりが劇的に変わったので、結果的にミキシングの精度があがりましたね。
TPS 7182を導入する前の音源と聴き比べると、処理が変わっていました。特に300Hz近辺の精度が、格段に上がっていたことを改めて実感できました。
低域を音楽的に整理できるようになったので、今まで以上にdbを稼げます。結果的に、ラウドネス規制に対しても余裕をもってミキシングができるようになったので、db管理に余裕が出てダイナミクスも今まで以上に付ける事ができるようになり、迫力感も増しました。
パワードスピーカーへの送りケーブルを変えるだけで、ここまで違ってくるのも驚きでしたね。

 

── その他、ギターやベースの録音用に両端フォンのケーブルもご購入されたそうですが、結果はいかがでしたか?

玉置淑晴氏:
録音した音もミュージシャンの反応も特に顕著なのはベースですね。
ベースをライン録音した際には、際立って改善されました。
このケーブルがもたらす200~500Hzの影響を、一番感じるのがこのベースの録音かもしれません。
そして、TPS 7182を使用して演奏したミュージシャンの反応が露骨で凄いんです(笑)
7182を使用してのRECが終わってから、ミュージシャンが持参したケーブルと比較テストすると、皆一様にびっくりして、こっちの顔を見ますね。
そして一言
「これ、どこで買えるんですか?」
って、毎回言われます(笑)

ギターのレコーディングは、最近はDIに直接接続してUA APOLLO内のプラグインシミュレーターで音作りをしてレコーディングする機会が多くなってきました。そのような時にTPS 7182を使うと、めちゃくちゃリアルな音になります。またLine6 HX Stompなどのようなマルチ型シミュレーターから録音する際も、その特徴は際立ちます。他のケーブルだと奥行き感がなかったりデジタル感が残ってしまう部分も、TPS 7182だとちゃんと出ます。まるでアンプで鳴らしてマイクで録っている感じですね。
ライン録音特有のノイズはあまり感じられず、でもあの真空管アンプをフルUPさせた、ノイズを含めた暖かさがちゃんと粒立って聞こえるんです。部屋の空気感も一緒にちゃんと聞こえます。これは本当に凄いなと思いました。

 

TPS 7182はクリエーターが使うべきマイクケーブル

── TPS7182をお使いになる前と、マイクケーブルに対する重要度は変わりましたか?

玉置淑晴氏:
先程もお話しましたが、ケーブルの種類で音質差があることは理解してましたが、ここまではっきりと音像が改善されたケーブルは初めてでした。正直、今までは「スタンダードなケーブルを使っておけば間違いないだろう」と考えていました。10段階評価で例えると、ケーブルの重要度は以前は7~8位くらいと下の方だったのですが、TPS 7182を使ってからは、上から3位くらいまで重要度が上がりました。
最初にTPS 7182を導入した時は、「マイクからHAだけ変えればいいかな?」と思っていたのが、使えば使うほど、他の箇所も変えたくなって来ましたね。
TPS 7182はしっかりした密度と低いノイズレベル、それと原音との差異を感じないほどナチュラルな音なので、とても大切なファクターになっています。

── TPS 7182を使用してみて、改めて気づいた使いにくいケーブルの特徴などはありますか?

玉置淑晴氏:
キャラクターが強かったり、クセがあるのは扱いにくいですね。
TPS 7182を使うようになってから、今まで標準だと思っていた幾つかのケーブルに、実はクセがあったり情報量が物足りなかったりすることに気付かされました。
それとケーブルをTPS 7182に交換した事によって、実機での変化だけでなくプラグインを通した時の掛かり具合の反応がかなり違いますね。コントロールしやすくなりました。TPS 7182はサウンドがナチュラルというだけでなく、プラグインの反応も非常に良好でした。

それと余談ですが、沖縄ではTPS 7182を早くから導入してるレコーディングスタジオが多くあります。私より一年早くInterBeeでその音に衝撃を受けて、すぐに300m以上購入されたエンジニアの方もおられました!
またあるギタリストはまずフォン-フォンを1本購入したところ、かなりの衝撃を受けたようで、しばらくしてから近所で会った時には「主要のインは全部TPS 7182に変えました!」と言ってました(笑)

 

── 高い評価を頂き、ありがとうございます! 最後に、このTPS 7182をどういう方にお勧めしますか?

玉置淑晴氏:
現場のエンジニアの皆様にはもちろんですが、私としては作曲からミックスまで、一人で全て作業をするDTMerに特にオススメします。私自身が楽曲制作からミックスダウンまでを一貫して作業しているのでよくわかるのですが、演奏を録音するスタートの段階で8割くらい音が決まります。アレンジからミックスに至る過程でも音像が変わらず作業できることで、軸がブレることなく、作業がスムーズになります。

実際によく「そろそろ自宅録音などで使ってるマイクもしくはパワードモニタースピーカーを、上のクラスのものに買い換えたい」という相談を受けることが多いです。その際にはまず「とりあえずケーブルをTPS7182に変えてみたら?」と勧めております。
マイクやスピーカーの買い替えは金額もそれなりに掛かりますが、それらに比べてケーブルでしたらかなり安い金額で済みますので「まずはこのTPS7182を使うと、ひとつ上のクラスの音に近づきますよ」という感じでオススメをしております。
実際にTPS7182を購入された方にその後聞いてみると、「確かにワンランク上がりました!」と、みなさんおっしゃいますね。

大きなスタジオと違い、限られた機材と予算の中で宅録作業しなきゃいけないDTMerだからこそ、最大限にパフォーマンスを発揮してくれるTPS 7182をぜひ使って欲しいですね。
少ない投資で誰でも簡単に、ワンランク上の解像度や密度になるので、本当におすすめです。
今はまだ、プロエンジニアの方々の使用が多いと思いますが、作曲からミックスまでを1人で作業してるクリエーターやアーティストの皆様にも、ぜひ積極的に使用してもらいたいですね。

 


株式会社ナンクル
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